動物の解剖学は、組織について扱う組織解剖学、運動の仕組みを理解するための機能解剖学、脳MRIにかかわる放射線解剖学など様々な観点を包摂する幅広い分野です。そのうえ、これら全ての観点は動物種の数だけ検討する必要があるのです!獣医解剖学はこうした多様な側面を持ち合わせているため、解剖アトラスは、ターゲットとなる読者を絞り、解剖学の特定の分野について特定の動物種に注力したものである必要があります。本記事では、獣医学生向けに、私たちIMAIOSがどのように肉眼解剖学のモジュールを作成したのかを2Dイラストの犬の筋学を例にご説明します。
動物の解剖学:学習の難しさ
筋学は筋肉やその機能について扱う一方、骨学は骨の構造について扱う学問です。解剖学の一分野である両学問は密接に関連しています。というのも、ほとんどの筋肉は骨格に付着しているためで、そのおかげで関節付近の骨を動かすことができるのです。しばしば「筋骨格」系という言い方がされるのはそのためです。骨学と筋学は、様々な動物種の間の違いを明確にし説明するために高い正確性が求められる難しい学問分野です。各動物種を他と分ける違いというのは、複雑かつ時に繊細なものです。一方、獣医解剖学においては比較解剖学が、様々な動物種の解剖学上の類似点や相違点を扱う学問で、生物について学び理解するにあたっての助けとなります。以上のような複雑さのために、イラストの分かりやすさと明快さが学習における非常に有効なツールとなります。
それゆえ、図像入りの解剖学においては、イラストよりもむしろ知識の伝達が重要事項となるのです。
現在、IMAIOSでは犬の筋学に関するモジュールを仕上げているところです。これにより、脊椎動物の解剖アトラス内の既存のモジュールがさらに充実していく予定です。
新しい動物解剖モジュールの構想と製作に用いられる方法は?
解剖学の知見を持つイラストレーターのGauthier Kervynが詳細に説明してくれました。「まず、既存の資料、依拠すべき資料について、多くの文献調査を行う必要があります。できる限り信頼性を担保するため、複数の情報源を突き合わせます」1。vet-Anatomyの大きな強みは、動物のCT画像に立脚している点です。DICOMファイル(AzurVetのDelphine Rault氏提供)から3Dファイルを抽出し、それを位置を変えたり明るくしたりして、2Dイラストのモデルとして利用します。 「このプロセスは独自のもので、骨学的な正確さを保証するものです」。次に、生きた動物を元にしたこの3Dモデルから筋肉を抽出します。
CTスキャンの参考として選ぶ動物は?
CTスキャンは、筋骨格系疾患を持たない生きた犬を全身麻酔して行います。大抵の場合、正当な理由なく動物に放射線を照射することないように、別の医療上の理由をもってスキャンが行われます。次に、動物の所有者に解剖学上の参考として画像を用いることについて同意を求めます。
以上の3D資料を参考に、科学的知見を持つイラストレーターがシェーマや解剖画像を突き合わせていきます。オリジナルの2Dイラストを製作し、四肢の一部や特定の筋肉について明確かつ解剖学的に正確な画像を提供できるようにするためです。
色付けも、革新的な点のひとつです。これにより、異なる視点や表示形式(外観、切断面、筋付着部)で見たときに様々な筋肉が特定しやすくなっています。また、機能解剖学を理解するための手がかりともなるでしょう。色は、筋肉の動きに関する情報が伝わるように、以下の三つの参照軸に沿って定められています。
- 外転・内転のための前後軸(緑色)
- 屈折・伸展のための内外側軸(赤色)
- 軸回旋のための垂直軸(青色)
このモジュールでは、個別の筋肉や筋肉の断面、段階的な解剖の様子を表示することもできます。様々な筋肉と筋付着部(筋肉が骨に付着しているところ)の関係性がわかるようになっています。
さらに、モジュールは非常に網羅的(600以上のイラストを収録!)で、平均して3、4つの方向からのイラストを収録しています(外側、正中、頭側、尾側+側面、背側、腹側)。
犬の筋学の解剖画像は、獣医学生がデジタルツールとして用いることができるように、一貫的かつ教育に適した方法で分類されています。デジタルツールを活用する利点は、印刷された本よりもたくさんの画像を収録できる点、それゆえ筋肉とその付着部を多様な方向から扱うことができる点です。印刷された紙のアトラスでは、これは実際的かつ財政的に難しいでしょう(印刷費用、ボリュームの問題)。
短中期的には、私たちIMAIOSは、肉眼解剖学とペット(犬、猫、馬、牛)の放射線解剖学におけるツールの決定版を提供することを動物解剖アトラス分野における目標にしています。
他にも良い知らせがございます。牛の骨学のモジュールが現在製作中であるということです。しかし、この記事をお読みになったみなさまには、モジュールの製作が非常に長く複雑なプロセスであることがご理解いただけたのではないでしょうか。どうかもう少しご辛抱を!
お待ちの間、ぜひ他のイラスト付き解剖モジュールをご覧ください:
https://www.imaios.com/jp/vet-anatomy/1/1
https://www.imaios.com/jp/vet-anatomy/4/1
参考文献 1:Robert Barone 'Anatomie comparée des mammifères domestiques' (subtitle of the volume 1 : 'ostéologie', subtitle of the volume 2 : 'arthrologie et myologie') and Miller's Anatomy of the dog
参考文献:‘Anatomy of the dog’ by Klaus-Dieter Budras, Patrick H. McCarthy, Wolfgang Fricke and Renate Richter